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  • 今日でほんとにラスト

    今日でほんとにラスト

    1月20日から上映されてきたアイカツ!の映画も今日で上映がラストだそうで、たくさんの人に見ていただいてありがたい限りです。

    10周年のお祝い楽しかった。

    10年前のことって、結構忘れかけている。なかなかもう振り返る機会もないので私が関わった当時の特に立ち上げの頃の事を思い出してみよう。

    といっても、ほとんどはどこかで記事になってる様な事だと思うけど。

    怒られたら消すかも(笑)

    アイカツ!話が私のところへ来たのは、別な作品「夏色キセキ」の作業をしている途中だった。多分2012の年明けとか結構ギリギリなタイミングだった様に思う。夏色キセキが春番だったので後半戦を作っている頃だったのでは無いだろうか。

    サンライズ(当時)との付き合いも、それまで全くなかったので私に任せるの不安じゃないの?と思ったが夏色キセキも一応アイドルネタだったし向いてると思ってくれたのかな?

    夏色キセキといえば寿美菜子嬢とは、その時に初めてまともに話した様に思うし芝居が非常に印象に残った。私にとっては、とても大事な役者さんとの出会いだった。

    シナリオ会議が始まったのは3月か4月、途中色々あって止まったりもしていたので作業は非常に遅れていた。

    夏色キセキに入っていた京極尚彦くんの監督作(ラブライブ)が動いているのを知っていたので、いつ放映?と彼に聞いてアイカツ!より先に動いてたのに放映は後だったのを羨ましく思ったのを覚えている。(アイカツ!は10月、ラブライブは翌年1月)

    私と加藤陽一は初めて組む、しかもお互いそれほど上(監督・シリーズ構成)に立った経験が無い状態だったので初めはかなり手探りだったと思う。

    サンライズPの若鍋さん1年目の制作チームのテレコムのP、テレビ東京の奈良さん、バンダイチームの人たちみたいな偉い人が沢山いて私がそれまで見てきた中では割と大所帯の会議だったので、色々言われたら嫌だなあ…などと思っていたがバンダイさんから難しい注文をされることは殆どなく、むしろシナリオで出てきた面白いアイデアをとにかくゲームにも反映させるぞ(時間もないのに)みたいなノリノリの雰囲気だったのでやりやすかった。

    もちろん大変なことも沢山合ったのだが…まあ今となっては笑える。

    とにかく止まったら落ちる(放映が)みたいな状況だったのであらゆる事が全力疾走だった。

    そして結局、3年半終わるまで走りっぱなしだった。

    もう今は無理だ(笑)

    ゲームチームの方もアニメと状況は変わらず、待ったなし。

    ドレスデザイン、カードデザイン、音楽制作、ゲームも制作は大変。

    しかしアニメとゲームの進行がほとんど追っかけっこしていたおかげで、シナリオとのシンクロ率は高められたと思う。

    フェブリスメーターと私が勝手に名前をつけた勝敗のポイントを表すバーが表示されるメーターやアバターのラフデザインは私が作ったのだが、時間がないけどアニメとゲームでデザインを合わせたいと言われてデザイナーもいなかったので私が起こした様に記憶している。ゲームチームはなるべくアニメのアイデアを拾おうとしてくれていたし、アニメの方でもなるべくゲームの面白い要素がフォローできる様にしてくれていた。

    お互いに時間がない中でアイデアを投げ合っていたので全部とはいかなかったが、まあ良くやっていたと思う。

    並走する彼らと顔を見合わせ、お互い大変だねと笑って話していた。

    役者さんのオーディションと歌い手さんの選定はほぼ同時進行で動いていた様に思う。

    今考えると少し時期をズラしても良かったのでは?と思うけど、春くらい?の段階で初期メインキャラ8人

    全員の役者と歌い手を一気に決めた。

    確か3DSのゲームで全員の声を入れたいからみたいな理由だったかもしれない(かなりうろ覚え)

    いや、ミシェルとかも決めたからキャラの役者は10人近く一気に決めた気がする。

    こんなに一気に決めることもなかなか無いのでは無いだろうか。

    キャストの選考を決める日は私の誕生日(6月10日)だった様に記憶しているので、オーディションはその少し前にやったのではなかろうか。決めてすぐゲームボイスの収録が始まった様に思う。

    当時アイカツ!あるあるであったのだが、ゲームの開発が先行しているのでシナリオにも出てきていないキャラの声をゲームに収録しなければいけない事がしばしばあった。

    なのでゲーム音声の収録には私も殆ど立ち会っていた。ゲームボイスのセリフの監修も私と加藤氏が目を通していたのでなかなかハードだった。

    しかし、ユリカは確か後でセリフを少々修正してボイスを録り直している筈である。

    シナリオが出来てなかったので当時は吸血鬼キャラという設定がなかったのだ。(沼倉さんすいませんでした)

    最初のゲームボイスの収録の時は他のキャラも大体こんな感じで見たいなざっくりしたイメージで作ってもらったと思う。

    テレビのアフレコが始まったのは、多分8月くらいとかからじゃなかろうか。(だいぶうろ覚え)

    音楽周りの初期は曲の発注などは私も参加したと思うが歌の収録などは水島氏と音楽チームにほとんど任せきりだった。キャラに関しては簡単なメモを書いて歌い手さんたちに渡していた程度。

    アフレコもしていないので歌い手の皆んなはかなり手探りだったに違いない。

    ロゴの制作などもシナリオと同時並行で進めていた。

    最初はコンペでは無く幾つか案が有ったのだが、思うところがあり無理を言って知り合いのデザイナーさんに声をかけコンペにして貰った。

    その中で採用されたのが内古閑さんのデザイン。

    私はコンペで上がってきた候補の中からプロデューサーたちが、ある程度選別したものをどれが誰のデザインということは聞かずに決めた。

    パッ見た時は誰のデザインか判らなかったけどコンセプトの昇華の仕方がとても素晴らしくシンプルにゲームの内容や作品の楽しげな雰囲気を表現してくれていたので選んだところ、内古閑さんのデザインと聞いて流石だなーと思ったのを覚えている。

    キャラクターの設定も一応コンペだったのだが、人が見つからず…というのと水島氏の紹介してくれた、やぐちひろこ嬢が圧倒的に良かったのですんなり決まった。

    アニメのデザイナーも当然一人では全部こなせないので、夏色キセキでメキメキと頭角を現した当時は新人原画マンだった渡部里美ちゃんとダメもとで電話したら引き受けてくれた石川佳代子嬢が参加してくれることになる。

    石川さんと私、内古閑さんも初めて顔を合わせたのはガイナックスで水島氏が監督で制作した「はなまる幼稚園」という作品だった。

    里美ちゃんは初期キャラクターの衣装替えのほとんど、石川さんはメイン以外の学園生徒やアイカツフォンなどプロップと呼ばれる小道具、宝石箱の様なフィッティングルームも考えてくれた。

    サンライズ側にいた最初期のメインスタッフは、木村、やぐち、石川、渡部。後は設定制作をやっていた今ではプリキュアのプロデューサーである田中昂くらいであった。

    メインで制作を請け負ってくれたのはテレコムアニメーションフィルムという、あの宮崎駿も在籍していた老舗スタジオである。

    テレコムのスタッフだったのが、その後長くアイカツシリーズに関わることになる色彩設計の大塚眞純嬢。当時ほぼ初めての設計業務だったと思う。

    そして美術監督の大貫雄司、撮影監督の宮川淳子嬢。編集の笠原義宏さんなど。

    他にも沢山絵コンテを描いてくれた矢野雄一郎さん、沢山演出をやってくれた小山田桂子さんなどがテレコムのスタッフだった。

    キャラクターにしても美術にしてもアイカツ!は設定の量が多かった様に思う…すいません。

    毎話ごとに違う場所出てきたり変装やらドラマで衣装を変えたり。

    設定に関わるの渡部さん、石川さん、大塚さん、大貫くんはとても大変だったろうと思う。

    設定というのはシナリオがある程度完成しないと作り始められないのでシナリオが遅れていたアイカツ!は設定もギリギリで追いかけっこをしていた。

    設定の発注はメインキャラクターは基本的に原案があったので原案に沿って発注。

    色も頭部はゲームチームの作った原案に沿っていた。

    原案と言えばエンディングにもクレジットされている川村歩さんが主にキャラクターのデザインをまとめていらっしゃったのだと思う。他の人のアイデアも当然入っていたと思うが主には川村さんがまとめていたと聞いていた。

    立ち上げは時間がなかったこともありゲームチーム側で先行してデザイン案が描かれていたのだと思う。私が入った頃にはキャラのデザイン案はメイン8人全て存在していた。髪型は子供への調査なども受けて変更があったキャラがいたと思う。ユリカとか。

    サブキャラはオリジナル、服装も制服以外はオリジナルなので自由に制作していた。

    服装は私は極力意見を言わない様にしていた。渡部さんにしても石川さんにしても服は好きな人だったので、おじさんが余計な口出しはなるべくしない様に気をつけていた。

    シナリオに関わる説明などがあれば伝えるくらい。

    色に関しても同様で相談されれば応えるが、女の子のセンスが必要なものに関しては基本的にはお任せで通したいと思っていた。ていうか今だにそう。おじさんが口出しても碌なことがない。

    基本的には私はまとめ役に徹して、女性の意見が反映される様にしていたつもり。

    立ち上げの頃アイカツ!に関わっていた女性スタッフや役者さんに子供の頃見て印象に残っている女のむけアニメはあるか良く聞いていたが、ほとんどの人が佐藤順一さんの作品を上げていた。セーラームーン、おジャ魔女、ふたご姫…など。

    私は一番最初のセーラームーンのノリが好きだったので、あの雰囲気を再現できないだろうかと目論んでいた。

    美術もセーラームーンや小林プロダクションが女の子向けの作品で作っていた様な雰囲気を意識していた。美術監督の大貫くんは、私が参加していた「はなまる幼稚園」の雰囲気を参考にしたと話していた気がする。

    美術デザインはちょっと西洋風というか少し洒落た和洋折衷のイメージでみたいなお願いをしていた様に思う。

    スターライト学園のデザインは何かイメージの参考みたいなものを大貫くんが挙げてくれていた気はするが、覚えていない。なんでも弁当の辺りの街並みは横浜の元町辺りの洒落た雰囲気みたいなお願いをした気がする。

    初期の頃は結構お仕事的にというか、あまりやる気なく参加してくるスタッフも少なくは無かった。あまりにスケジュールが悪かったので、それも当然と言えるのだが。そんな中、撮影監督の宮川さんにのやる気にはすごく励まされた。フェブリスアンテナ(この名称も作中では使わなかったかも…)という観客が頭につけるアンテナから出る星やシーンの変わり目に入るワイプは彼女が作ってくれた。ワイプは石川佳代子さんにタタキのアイデアを出して貰って宮川さんが起こしてくれた様に記憶している。

    宮川さん、石川さんといえばカレンダーガールのレコードの回る速度はテレビ局の注文もあってかなり直しを重ねた。最初はかなり早く感じたので仕方なく数枚の絵を不採用にして決定された。

    最近イベント上映の時に話したけどカレンダーガールのエンディングで回っているレコードを未来のいちごが止めて終わるというアイデアを私は考えていたのだが、絵コンテから丸々石川さんに頼むことになって、その時アイデアは不採用になった。この未来のいちごのアイデアがSTARWAYの映画に繋がっている。

    CGはサムライピクチャーズさんがテレコムの紹介で担当してくれることになった。時間がないのに前向きに色々相談に乗ってくれたのを憶えている。

    キャラのモデルは時間が無かったこともあり、あまり手が入れられないというような話だった気がするが結局色々あって修正されていったのはみなさんご存知かと思う。

    カメラワークも最初はゲームで付けたものを軸にアレンジしていく様な方向性だったが、後にディレクターの北田さんの参加で大きく変わっていくことになる。

    1話でのフィッティングルームで天井に光が映ったりするのは地味に部屋全体を3Dで組んで作って丸い天井への光の反射を作っている。

    アイカツ!の頃は昼間は、ほとんど打ち合わせで夜にデスクワークだった。アニメの監督は皆んな大体あまり変わらないと思うけど絵コンテ描いたり直したりは夜中の作業になってしまうことが多い。

    なので朝方とかに制作が私が描いたり直したコンテを回収にくるのだが、アイカツ!は人が少なかったこともあり、このままでは私も制作も疲弊してしまうと思い当時は出て間もなかったCLIP SUTUDIO PAINTで絵コンテの直しをやるという方法に1クール終わる頃には切り替えたんじゃないかと思う。

    データでのやりとりで済むので、非常に楽になった。

    1話は手描きのコンテで完成したのは6月の頭とかだった気がする。ヤバい……。

    2話は矢野さんがコンテを描いてくれて以降、矢野さんのコンテには沢山助けられた。

    矢野さんは宮崎駿の薫陶を受けた世代の方で姿はオジサンだが心は乙女の優しい方。絵は当然上手いが滅法手も早く2週間で1本くらいのペースで絵コンテを描かれていた様に思う。

    私なぞ遅くて遅くて、結局1話のコンテを描いて以降、次にテレビのコンテを描いたのは177,178話になってしまう。

    Signalize!のオープニングは夏色キセキの作画チームが担当してくれた。

    あの時はCGが間に合わなくてダンスシーンも作画で作っている。原画は確か長田伸二。

    いちごが着替えつつ色が変わるカットは渡部里美ちゃんが原画を描いて変わった色にして!みたいな注文で大塚さんに自由に色を決めて貰ったという記憶がある。

    最初のいちごが振り向くあたりは岩崎茂希くんが担当、ジョニーのあたりは盟友の安彦英二が描いてくれた気がする。

    作曲のNARASAKIさんは「はなまる幼稚園」でご一緒していて水島氏が繋いでくれて快く引き受けていただいたという流れだったと思う。

    音楽といえばMONACAチーム。

    私が入った時すでに何曲かはゲーム用のデモが存在していた。

    ゲームに最小された順はアニメの方との兼ね合いやらラインナップのバランスやらで最初にできた順から搭載されていたわけではない。

    劇伴の打ち合わせは帆足くんと石濱くんの二人で来てくれた気がする。石濱くんは大変なシャイボーイで当時はあまり話してくれなかった様に思う。沢山話す様になったのは劇場版アイカツの後あたりかなぁ。帆足くんはいつも気さく。絵コンテを簡単に編集してフィッティングシーンのガイドを作って帆足くんに曲を作って貰った様に記憶している。

    音響監督の菊田さんは、やはり夏色キセキからの流れで他の候補もいたと思うが私の希望や現場のテレコムさんも懇意だったこともあり決まったように思う。

    菊田さんはラブ&ベリーのゲームの収録も担当していたそうだ。

    アイカツ!のキャストには新人も多かったため当時は私はよく分かってなかったが個別指導をしてくれていたり丁寧に面倒を見て貰って、私自身も沢山勉強させて貰った。

    1話に色がついて完成した時、菊田さんが皆んなで見ようと言ってアフレコブースで映像を流して見た気がする。アフレコの時はいつもコンテ撮といって絵コンテを撮影して芝居が何となくわかる様な状態でしか収録できていなかったので完成形を共有するのは必要があるということだったと思う。

    うーーん、新人さんが多い現場で、あの状態のアフレコは本当に申し訳なかったなと今更ながらに反省。といっても当時はどうしようもなかったのだが…。

    1話も確かコンテ撮でアフレコしていると思う。

    さてさて、長くなってしまった。何とか1話が出来上がって、その後3年半アイカツ!は続く事になるのだが途中に映画も作ったりで、ずっと全力で走っている様な状態で当時は振り返る余裕もなかったし止まったら死ぬみたいな勢いで、ヒットしている状況も考えると怖くなってしまうから途中からはあまり気にしない様にしていた。

    とにかくドタバタと始まって、放映できたのが奇跡くらいの状態だったので、その後、形を変えて10年もプロジェクトが続くとは、流石に思いもよらなかった。

    2年は続く様にしたいなあ、というのが密かな目標であったが、それも1年やって続く様なら若い人にバトンタッチしようくらいの心持ちだった。私みたいなオジサンがやるよりは若い人の方が適任だとずっと思っていた。1年、また1年と伸びて3年半。今考えればそう長い期間でもない気もするものの、当時は倒れずに走り続けるので精一杯という思いもあった。でも、なんやかんやとこうして長く関わらせて貰えたの事には感謝している。

    特に今回の映画は手がけられて良かった。

    最後にもう一度、見ていただいて本当にありがとう。

    また気が向いたら昔話を書くかもしれない。

    取り留めない話にお付き合いいただき感謝。

  • やっと2022年が収まってきたかなぁ

    やっと2022年が収まってきたかなぁ

    年明けから始まったアイカツ!10th STORYの上映も終盤戦に差し掛かっている。

    沢山の方が観てくれて感謝しかない。

    なかでも子供の頃に見てくれていた女の子たちが見にきてくれたのは非常に嬉しい。

    高校生や大学生になった当時の視聴者に響く様な作品にしようという主旨で作られた作品なので、まさに見てほしい人が見てくれたということだ。

    昔のスタッフが見てくれて感想を直接くれたりSNSに書き込んでくれたのもありがたかった。

    ずっと準備をしてきたスタッフの苦労も報われたんじゃないかと思う。

    ミュージックフェスタも最後は滑り込みで声出し可能になってファンの皆んなも喜んでくれたいた様だし、我々も楽しかった。

    やはりファンの笑顔は我々の苦労を存分に癒してくれる。

    10年越しの新作で後日談を描くというのは、見たくないという人もいたのではなかろうか。

    何を描くか、ということについては殆ど私と加藤さんに任されたのであるが、私の方では具体的なアイデアはなく、ただ当時7〜9歳だったアイカツ!の視聴者として想定されていた、そして視聴率などみるに実際に見ていてくれていたであろう女の子たちの背中を押せる様な作品にしようという事だけは皆一致していた。

    かくして、インタビューやら舞台挨拶やらで話した様に卒業と大人になるということがテーマになった。

    後日談の中身はともかく当時見ていた若い人たちに響いてくれるといいなということだけ考えていた。

    響くも何も、当時の子供たちが見にきてくれるのかな?という心配もあったが、それも十分に裏切られた。

    私は大人について偉そうに語れる様な人間ではないけど、大人になるのは大変だが楽しい事だと思う。概ねは。

    鍋をつついて酒を飲むのもまた大人ならではの楽しみ…酒なんか飲めなくても楽しいことは色々あるね。

    これが大人なのである、などという形はないのだし、それを良くも悪くも自分で決められるのが大人になるということなのだから。

    とにかく大人になるのも悪くないね、と若い人たちが思ってくれたら嬉しい。

    歳をとるのも良いもんです。

    そして繰り返しになるけど、私が思っていたよりずっと沢山の方に映画を観て貰えて本当に嬉しい。

    去年はテレビシリーズ2本にアイカツ!の映画が動いていたため、べらぼうに忙しかった。

    年が明けても舞台挨拶だとか映画にまつわるイベントと小さな仕事なんかで、なかなか落ち着かなかったがやっと一息つけそう。

    つい先日は同期の演出家の作品の仕事を終わらせた。何とは言えないけど、制作は発表になってる作品だからしばらくしたら観られるのかな?いや、最近は放送まで時間がかかるので、まだ結構先なのかも。

    まあ、今年は誰かの手伝いでのんびりと過ごすことになりそう。

    作品を作っていると色んな方のお世話になるのだが、なかなか恩返しの機会もないので返せる時には返したい。

    しかしタイミングがなかなか合わず、最近は不義理ばかり。

    借りたら返すがアニメ業界の仕事人の渡世というものだったのだが、借りるも返すも難しい時代になってしまった。

    借りずに済めば良いのだが借りたくても借りられぬ人手不足。

    発表されてなくても水面下で動いてる作品が沢山あるので、さもありなん。

    さて、今年私はは人に手を貸せそうな気はするものの、なるべく楽しい作品に手を貸したい。

    仕事との出会いは偶然なので、面白そうな仕事に出会えることを祈るばかりだ。

    のんびり温泉に浸かったり、本読んだり、映画見たり、音楽聴いたり、やりたいことは色々あるので仕事はほどほどに…てな訳にはなかなかいかないか。

    大人は大変……あら?

  • 10年…だって

    10年…だって

    2023年1月20日、今週の金曜から映画『アイカツ!10th Story 〜未来へのSTAR WAY〜』(タイトル間違っとるかもしれん)が公開になる。
    先日、初号試写というやつをやった。
    初号ってなんだよ、っという御仁に少し説明するとひと昔前まで映画は合成樹脂の透明なフィルムに映像を焼き付けて後ろから光を当ててスクリーンに映写していたのだ。
    テストで焼いたフィルムを0号といって、調整を経てお客さんに見せられる状態で焼かれたフィルムを「初号フィルム」と言っていたのである。
    フィルムを焼く、という表現も若い人には甚だ分かりにくいと思うが割愛。
    今はDCPというデータで上映されているので、お客さんに見せられる状態のDCPの映像を初めてスクリーンで関係者が見る事を初号試写と呼んでいる。

    出来上がった作品は何度か見ているので、さすがに落ち着いて見られたのだが、集まった関係者の懐かしい顔を見ていてグッと込み上げるものがあった。
    放映開始から10年経ってるので、立ち上げからアイカツ!のプロジェクトに関わっていた人は殆どいない。
    私もアニメの企画が始動を始めてから入ったので、本当の立ち上げから関わってるのは加藤陽一くん位かもしれない。
    とはいえ私もほぼ立ち上げメンバーで、アニメの現場で立ち上げに関わっていた人は今アイカツチームには私以外いない。
    試写では、そんな立ち上げ当時のメンバーが結構集まってくれた。
    作品に直接関わってくれている人ももちろんいるが、もう離れている人ともちらほら来てくれていて、とても嬉しかった。

    MONACAの作曲家・帆足くんとは何年ぶりかで会えて思わずハグしてしまった。
    アイカツ!的、作詞家・御三家の辻さん只野さん、こだまさんも来てくれていた。
    只野さんは、試写の後ずいぶん長い事ロビーに残って話し込んでいて帰りもご一緒してしばらく話し込んだ。
    只野さんは20年近く続いているプリキュアにアイカツ!より長く関わっているので、色々話して励みになった。

    関係者は、監督にとっては最も先に反応してくれる観客だ。
    意外と関係者の反応はビビットなので、見せる前はドキドキする。
    試写の後の皆んなの反応を見て少し安心できた。
    これで観客・ファンに見せられる、と思えるようにはなったのだが、まだ怖い気もする。
    作品は終わって仕舞えば完全に観客のものだ。
    観客の心の中に残っているものが全てだ。
    アイカツが終わったときは娘を送り出した様な気分になったのを憶えている。
    今回の作品は、一旦、観客の手に渡したものをまた返して貰って作った様なものなので非常に緊張している。
    ただただ楽しんでくれる事を願うばかりだ。

    今回の映画は完全に昔見てくれていた人に振り切って作っている。
    当時、アイカツ!がメインターゲットととして想定していたのは7〜9歳の女の子。今、高校卒業したかしないか位の年齢の人たちだが、その世代の人たちに向けて作った。
    なので卒業をテーマとして取り上げてある。
    10年経つと当時ファンだった子がスタッフとして働いていたり、演者として関わっていたりもする。
    私もアイカツ!に関われた事で色々な経験をさせて貰った。
    今度の映画はそういう色々への感謝の気持ちも込めたつもりだ。
    いや…大仰な内容ではないのだけれど、むしろこんな話で大丈夫なのか?といまだに心配だけれど、オールドファンは楽しんでくれるのではないかと思っている。

    なにはともあれ、もうすぐ公開である。
    この映画をきっかけに、しばらくの間ファンも関係者もアイカツ!10周年を楽しんでくれたら、こんなに嬉しいことはない。

  • バスケはよく知らないが…

    バスケはよく知らないが…

    近所の映画館でスラムダンクがやっていたので見に行った。
    田舎の映画館なので余裕で観られるだろうとたかを括ってギリギリに行ったら、ほぼ満席で危うく入れないところだった。
    あんなに人が入っているのは滅多に観ないのだが……。
    客層も特に原作を読んでいた人ばかりという雰囲気でもなく、老若男女偏りなくいてヒット映画の典型といった風情だ。
    私も原作はほとんど知らず、連載のはじまった頃に少し読んでいたのでキャラクターの名前は多少判別がつくくらいの知識しかもっていない。
    私なんぞが言うまでもなく面白い映画だったが、作りが変わっていたのでメモ的に記録しておく。

    ネタバレ的なことも書くので読みたくない人は気をつけてください。

     

    さて、冒頭は……なんせ地味だなと思う。
    絵は素晴らしいものの華のある画面というわけではなく、あの二人が1オン1
    をしているというだけで、原作知っている人であればエモいのかもしれないが、まずあの二人の関係が直ぐには分からない。
    ポンとワンカット入る手洗い場の上に置かれたリストバンドの画が全編通して重要なアイテムになっているのだが、それも大して長く見せるわけでもなくサラッと映している。
    直ぐにはわからない、というのはこの映画の特徴で監督の趣味でもあろうと思われ、とても良い効果を発揮している。
    ここでリョータの名前は呼ばれるが、この映画の中で人物の名前が説明的に呼ばれることはない。
    説明的に呼ばれることはない、というのはとてつもなく重要。
    これも直ぐに分からなくても良い、という監督の明確な態度を示している。
    普通、娯楽映画のシナリオであれば新しい登場人物が出てきたら、その瞬間か程なく名前を誰かに呼ばせてやる。
    が、この映画ではそれを敢えてしていない。
    それはスラムダンクだから原作がよく知られているから、それで良いという判断もあったかと思うが、説明的に名前を呼ぶことに対する拒否がハッキリと観て取れる気がする。
    そして、映画が始まってしばらく音楽が鳴らない!
    冒頭のムービングロゴの所にはギターが鳴ってるだけ…。
    音楽と効果音、音の使い方は、この映画に特異な印象を付けている。
    多分初めて劇伴が鳴るのは試合が始まってから(しかも大して盛り上げない)で冒頭のそれなりに長いドラマ部分は効果音だけで作られている。
    これは効果さん的には相当に腕が問われるので、なかなかプレッシャーだと思うがよく出来ている。
    効果音は全体に非常にいい仕事をしていた。
    笠松広司さんの名前がクレジットされているので、よい音響の映画館で見ると随分印象が変わるかもしれない。
    監督のインタビューをザッと読んだら音楽の付け方はお任せしたというような事を言っていたので笠松さんが音楽ラインを基本決めたのではないかと思われる。
    正確に記憶していないが音楽が使われているのは殆ど試合のシーンだったのではないか。
    普通、平場の長いシーンなどでは情感の音楽を付けたくなるものだが、あえてやらないという判断だったのだと思う。
    ドラマ部分では音楽で情感、エモーションを盛り上げる様な事は絶対やらないという抑制の効いた態度は娯楽映画としては非常に勇気のいるものだと思うし、実際に来ている客層からすると見続けるのが辛くなるギリギリのところかなと感じた。

    試合の間に回想が入る形で進んでいくというのも、話が分かりづらくなりがちなので娯楽としては非常に難しいが上手く見せられていたと思う。
    リョータの縦軸の物語が原作を知らなくても他のキャラ含めキャラクターを魅力的に見られる様にしている。
    初見の人でもキャラクターをある程度理解できるように回想を作っているのが面白いバランス。
    ドラマは非常に抑制されていて玄人好みの日本映画といった風情だが娯楽的にもしっかり目配せされている。
    それは前半はあっさりと終わっていく試合シーンの後半の見せ方で花開いていく。

    後半の試合のシーンは、えげつない位に娯楽的な盛り上げを絵も音楽も達成していてラスト近辺の音楽の使い方はとにかくあざといし、ラストのシュートが決まった後の無音の長さも普通の人なら勇気がいる様な演出だが非常に効果的だったと思う。ドラマ部分の抑制が試合部分のあざとすぎる位のあざとさを際立たせていた。

    ドラマ部分は本当に最後まで抑制が効いていて、人が何か成し遂げるには時間がかかるのだということを試合部分にも重なる様に描いていて非常に良かった。
    エンドクレジットの後の画は監督の中に染みついた娯楽精神の表れで稀有なバランス感覚の持ち主だと思う。私が偉そうに言うまでもないが………。
    見習いたいものです。

    残された人間がどう生きるかというモチーフは「すずめの戸締まり」と同じなのだが見せ方が真逆で新海誠は非常に情動に訴えかける様な見せ方をしているのが好対象。たまたまだろうけど同じ様な時期に同じ様なモチーフが重なるのは何かを象徴している気もして面白い。

    もう少し書けるけど疲れたのでこの辺で。
    とにかく非常に面白かった。
    こういうの書くときは自分のことは棚上げ……。

  • 明けまして

    明けまして

    クリスマスにやった先生は、話し出したらすぐ時間に収まり切らないのが分かってしまったので少し焦って分かりにくくなってしまったかもしれない。
    反省。
    声優の卵や、半分業界に足を踏み入れている子たちに向けて演出の仕事を説明しよう、ということだったのだが短くまとめるのは難しい。
    リアリティについてなど結構むずかしいけど重要なことに踏み込んだのだが噛み砕ききれなかったかも。

    年の瀬は色々やらなきゃいけないこと、やりたいことがあったけど疲れが出てしまったのか、あまり手がつけられずに終わった。
    ぼやぼやしていると忙しくなりそうなので、事務的なことなどは早く片付けないと…。
    本は数冊読めた。
    今年は少しづつでも積読を崩したいものだ。

    街は賑わいを取り戻した感がある。
    元日から開けている店も多かったのは数年の売り上げを取り戻そうということなのだろうか。
    明治神宮に初詣に行くと、人手はコロナ前に戻っている感があった。
    お守りやおみくじなど売る場所は拝殿から少し離れた場所に設置されていて、まだコロナへの配慮がされていたが、境内の出店もあってほぼ通常営業になっていた様に思う。
    おみくじ売り場で酒を片手にしたミュージシャン風のお兄さん達が「これ大吉とかないの?」と巫女さん姿の売り子に問うていたが、明治神宮のおみくじは和歌が書かれていて一年の指針にして下さいよ、というものなので占い風味は少ないのである。
    大晦日から働いて帰りに寄ったという風情の人や、戯れている若い男女もいて賑わっていた。
    表参道にも出店がずらりと並び、朝にはさすがに人手は少なかったものの昼くらいにはギッシリと人がいて繁盛している様だった。
    元日から開けている飲食店は、ほとんど行列ができたいた。
    千疋屋は、朝、店の前に大晦日に人が立ち入らない様にしたと思われる「立ち入り禁止」と書いた黄色いテープがべったり貼られていたが昼前には入り口前だけ剥がされて営業していた。
    ほとんどの人は店には入れないので出店で何か買って沿道で食べていた。

    今年は色々風向きが変わるのだろうが、私はどうだろうか。
    先のことは何も決まっていない。
    先のことは決まっていない、で四半世紀くらい生きてきたので怖いということも無いのだが、歳の近い人がポツリポツリと死んでいくのを見て私の残り時間はどんなもんかな、とはよく考える様になった。
    とはいえ人生の残り時間など、おみくじを引いてみても分からないのだし考え過ぎても意味はない。
    会いたい人に会う、とか小さな願いは忘れない様にしておけば実現できるだろう。
    大きな願望は、もうあまり無いし実現の見込みも薄いので、あまり捉われるつもりははない。が、まったく無いわけでも無い。
    なるべく出来ることを楽しく。

  • もう一息

    もう一息

    アイカツ!の映画の方は、だいたい完成。
    グレーディングも済ませDCPを焼いて試写すれば、あとは披露するばかり。
    ギリギリまで作っている作品だとDCPを手で運ぶ…なんてこともあるみたいだが、そんなことにはならずに済みそうだ。
    DCPとはデジタルシネマパッケージの略である。
    竹芝のイマジカは出来たばかりなので、とても綺麗で心地よい。
    五反田も何度も映画の試写などで訪れて思い出深いが、再開発されるみたいだ。
    東京現像所も閉じフィルムを扱うところもだいぶ少なくなったんじゃなかろうか。

    作品の完成が見えるとほっとしたり、嬉しかったりという気分が湧いてくる。
    同時に、少し離れて見られるようになって気づくこともある。
    製作中の作品の映像は更新されれば随時チェックするのだけど、映像を眺めていて特に意図したわけでもないのに違う作品で同じモチーフを同じ構図を使っているのに気づいた。
    あれ?とシナリオを読み返してみると片方はシナリオに指定してあり、片方はないので私がアドリブで入れたらしい。
    別に問題ないのだが、最近まで気づかなかったのが不思議だ。

    各話の演出をたくさん担当していた頃は、違う作品で似たような話を担当することがあった。
    夏であれば肝試しとか、海へ行くとか冬はクリスマスとか。
    同じモチーフの話だと自分の好みが出てしまいやすい。
    構図やら演技やら、放映時期の同じもので同じネタを担当するということはあまりないので(発注する時期が大体被るから同時に来ても受けられない)見てる人が気になることは無いと思うが、自分では覚えていることも多いので、そういえば前も同じようなことやったなと思いつつ、さりとて自分の好みから離れて別な事をやるのは難しい。
    そして、何度も同じ事をやると上手くなるので似たようであっても数を重ねるごとに面白くは出来るようになると思う。

    個人の好みではないけれど、現在製作中の「もののがたり」と「おとなりに銀河」はどちらにも家族というモチーフが出てくる。
    家族が描かれているから引き受けた、とかではない。
    引き受けた理由は別で、たまたま同じモチーフを扱っていただけである。
    同時代に描かれた作品が同じモチーフを共有するということは良くあることかもしれない。
    「エヴァンゲリオン」と「もののけ姫」はどちらも主人公の少年が呪いの様なもの
    を背負ってるが、二人の監督が共謀したわけではなく当時の気分を共有していたということなんだろう。

    自分の絵的な好みは嫌というほどわかっているが、好みだけで構図を選んでいるのではない。理屈に従うと作品によっては使える構図はかなり限定されてくることもある。
    それが好みの様にも映ることはあるだろう。
    いやしかし、好みで仕事を選んでいる側面もあるわけだし、好みと論理は簡単には区別できないかもしれない。

  • 珍しく先生をやる

    珍しく先生をやる

    今月やる若い声優さん相手のワークショプ用にちょこちょこ講義の内容をまとめていた。
    私は実演家ではないので、座学になるわけだが、まあまあ面白く聴けるのではないかというものになったかな。
    アニメの制作の中でも演出家というのは何をやってるんだか分からないという人は多いのじゃないだろうか。
    画を作るスタッフ向けにも演出の講座みたいなものをやっているところは少なくて(全くないわけではない)演出が自分の技術について語るという機会はあまりない。
    演出を教えるとなると、作品の良し悪しを計る物差しはないから演出の良し悪しも作品によって変わって教えにくいものである…と思っている人も多いのだが、そんなことはなく基礎的な技術なんかは、どんな作品をつくるにせよ変わらなく案外と言語化できる。
    しかしまあ、教えるのも教わるのもそれなりに時間もかかるし、なかなか演出の技術が伝わる機会は作りずらい。
    かくいう私も師匠に手取り足取り教わったということでもないのだが、それでも師匠と言える人がいるので、それが大きな足がかりになった。
    演出についての本もあるにはあるのだが、意外と分かりやすく初心者が学べる本は少ない。
    富野さんの指南書なんかはアニメ関連の演出の本の中では比較的分かりやすかったような覚えがある。
    覚えがあるというのは、読んだのが昔過ぎて記憶が定かでないからだが…。
    アニメ関連ではないけど、平田オリザ「演技と演出」は演出の仕事を知るには良い本だと思う。
    主に”演技を演出する”というタイトル通りの部分について語られているのだが、アニメの演出家は演技というものについて、誰かに教わった経験がある人というのは殆どいないと思うので、その一端を知るものとしては読んでみて欲しい、とこんなところで書いていてもしょうがないのだが。
    そもそも本を読まない人が多いんだよね。
    本を読め、と若い演出家には言ってはいるものの実践してくれているだろうか。

    アニメ業界での教育の機会を作るのは難しい、が最近は少しずつ増えてはいて、特にアニメーターはあまりに不足しているので育てようという気運は高まっている。
    演出家の方はイマイチ進んでおらず、なんとなくで仕事をしている人も少なくない。
    そこは、も少し何とかしたいのだが。

    話は戻って声優さんたちは、色んな演出家と仕事をすることになる。
    アニメの場合は、音響監督が直接的には演出家として役者と向き合う機会が多いが、最近は監督が自分で音響監督をやっている場合もあるし。
    何にしろ、作品ごとに違うに違う演出家と付き合うことになる。
    まあ、色んなことを言われるわけで、それは大変だ。
    多少なりとも演出家の仕事を知ることが、求められるものへの理解へ繋がると良いなと思っている。
    演出家なんて勝手な生き物だからね…。
    いや、私は勝手ではないつもりだが、そう見えることも多々あるだろうな〜。
    広い心で受け止めていただきたい。

  • ついに年末

    ついに年末

    多少、余裕も出来たのでワールドカップを見たり。
    スペインに勝つとは思わなかった。
    「すずめの戸締まり」遅ればせながら見に行けた。
    制作が大変そうな話は聞いていたが、そりゃこれを作るのは大変でしょうよ、と頷かされた。
    ジブリの映画がしばらくなくて、代わりを担っていたのは細田さん、新海さんだが新海さんが一歩抜け出したような印象。
    大勢が興味を持てるようなネタを上手く料理して新海さんらしさも残しつつ、面白くまとまっていたと思う。
    要石側の理屈はもう少し説明したほうがいいと思ったが、目をつぶれるような作りには出来ていたんじゃないだろうか。
    天変地異を題材に3本作ったので次は何を作るのだろう。
    毎度、皆の期待に応えていくのは容易ではないが、新海さんは毎度進化を感じるので楽しみだ。
    アニメの映画も最近は沢山あってなかなか追いかけきれない。
    デルトロのピノキオとフィル・ティペットのマッドゴッドは何とか見に行きたい。
    知り合いの関わっているものも全然見られていない。
    最近は配信でも見られてしまうので、油断して余計見逃してしまう。
    ディズニーの新作なんかも映画館では最近はあんまり大きく宣伝しなくなって配信で見せる方に切り替わってる感がある。
    歳を食ったせいで最近は長い映画を見るのに少し身構えてしまって、3時間とかあると配信でいいかな、などとも思う。
    すずめ…も、まあまあ長かったので構えていたが長さを感じず楽しめた。
    ブラックパンサーの新作も見たいけれど、3時間くらいあるからなぁ…。
    しかし、映画館で映画を見るのは好きなので時間があればなるべく行きたい。

    年が明けたら、自分の映画「アイカツ!10th story」も公開だ。
    映画といっても短めだし軽い感じで見られると思う。
    ただ、完全に昔見ていた人のために作った作品なので初見の方にはお勧めしない。
    が、なるべく大勢の人に見てほしいのも素直な気持ちで同窓会に行くみたいな気分で映画館に足を運んでくれるといいなと思っている。
    10年経つと本当にいろんなことがあるもんだな、とつくづく感じる。
    後日談みたいな映画は蛇足になりかねないが…なかなか10年経って作品を作らせてもらえるタイトルというのもないので、できる限りのことはやったつもりだ。
    喜んでもらえる作品になっていると思いたい。
    大ヒットはしないが、来た人は楽しんでもらえるんじゃないだろうか。
    私がアイカツ!に関わる機会も、流石にこれが最後かなと思うし。

    来年は何をやっているだろうか。
    来年放映の作品が始まる頃には制作は終わっているので、次の仕事をしているとは思うが、特に何か決まっている訳でもない。
    相変わらず流浪の人生。
    楽しくやれればなんでも良いが。

  • 今年も終わりじゃん

    今年も終わりじゃん

    もう11月も半ばに入ってしまった。
    仕事は落ち着いてきたものの、10月末は事件があったりで気分的には全く落ち着かない。
    この一年放置してきた私的なことを片付けたいが、やっと本を読む時間が取れる様になったくらい。
    来年の作品の準備はまだ続いている。
    先日、とある作品の音響用の準備に途中経過の映像を編集する作業をしたのだが、とても良い出来である。
    ま、最後まで作り終えてみないと本当のところは分からないのだが、十分すぎるほど期待させる出来だった。
    そこの班は地方で制作していて、演出家も若くて、一人で全てやるのはこれが初めてということだった。
    どこにでも凄い人たちは居るものだと感心するばかりである。
    他にも、以前一緒に仕事をしていた演出家が監督となり凄い出来のPVを発表していたのを見て驚愕した。
    正直今アニメ業界は空前の人手不足でグダグダなのだが、そんな中でも血気盛んに良いものを作っている若い人たちは素晴らしい。
    昔なら、負けない様にしなければなどと思ったものだが最近は観客の様に楽しむだけで自分に引きつけて考えることはあまりない。
    別に仕事に対してやる気が無くなったとか探究心が無くなった、というわけではない。
    今作られている良くできたアニメの作り方の仕組みというか、こういうことをやっているのだな、という作り方の部分は大体は映像を見れば分かる。
    しかし、だからといって真似が出来るものではない。
    真似はできないが仕組みは、既存の制作手法の延長線上にあるので大体わかる、という印象だ。
    良くも悪くも、日本の商業アニメーションは同じ制作手法で作っているので、私でなくとも皆んな何となく想像出来る。
    単純な制作技術の部分はわかっても、人材集めみたいな部分が真似できないと、その凄いものの真似はできない。
    技術そのものよりその土台となっている何かを実現させるほうが遥かに大変だったりする。
    人の庭は、どんなに手に入れたくても人の庭なので、自分に引きつけて考えたり羨望したりはあまりしなくなってしまった。
    あとは自分の興味が、目の前の仕事と少しズレているせいもある。

    なんとなく、この後は色々潮目が変わったり、やりたいことがあったりで人生の転機みたいな時期に差し掛かっているのかもしれない。
    そんな大袈裟なもんでもないのだが、人間、5年とか10年おきにそういう時期が来るものだ。
    死ぬまでの時間はもう長くは無くなってきたので、体力もないし派手なことは出来ないが、なるべく楽しいと思うことをやっていきたいものだ。

    数日前、若い人が仕事で書いたコンテにアドバイスみたいなものをつけて返してあげたら結構喜んでいた。
    私のアドバイスは、なかなか分かりやすく的確なのである。
    アニメ業界から師弟制度が無くなって久しいので、ひたすら独学で誰かのアドバイスを受ける機会は猛烈に減っている。
    そういう若い人のお手伝いはちょっとやりたいと思っている。

    あとはインディペンデントで何か作ってみたいな。

  • アバター見たことなかったので

    アバター見たことなかったので

    先日、2に向けたリバイバル上映をやっていたのでアバターを3D IMAXで鑑賞。
    流行りの映画は見逃しまくっている人生だが、しょうがない。
    滑り込みだが見られてよかった。
    サービス精神に溢れまくっていて楽しい映画だった。
    アフリカンなエスニックイメージへの憧憬とエコの真っ直ぐな接続はどうなんだ?とは思うが、そんなことはどうでも良くなる程、美しくこんなものを3DCGで作っていたのかと思うと気が遠くなる。
    2009年公開だから制作は十数年前なので、凄すぎる。
    リバイバルに当たって手を入れたりはしているのかもしれないが、それにしても。
    概ねは現実にあるものを下敷きにしているようだが、デザイン作業だけでも気が遠くなるほど膨大だったに違いない。
    シダの歯が生い茂る森の中をキャラクター動き回るのだから、それだけでえーーーーっと思う難しさがある。
    映画の冒頭の方は、わざと被写界深度を浅めに作って3Dの奥行き感を強く感じるように作ってあったが、そうすると却って画面が狭く感じてしまうなあ、とおもっていたら後半は、あまりやりすぎないように良い塩梅に調整されていた。
    被写界深度が浅いと画面が狭く感じるというのも不思議だなと思うがIMAXで見ていても画面の端を感じてしまうのだから人間の視野がいかに広いかということの証左かもしれない。
    3D映画を見た時のミニチュア感はなにが原因なのだろうと、ずっと思っていたがピントの合い方が肝なのかもという発見があった。
    遠近法は鑑賞するのに適切な距離がある、という話も思い出したりして画面と鑑賞者の関係は時間が出来たら考えてみたい。
    何が一番感心したかというと、シナリオだ。
    セリフがすごく良いとか予想を裏切るような構造ではないけど、お客さんを楽しませるという意味で凄く丁寧につくられている。
    サービス精神が旺盛なのだ。
    娯楽ドラマの凄く基本的な構造として前半戦でネタを振って、後半戦で回収していくというものがある。
    アバターは、それを丁寧にやっている。
    ネタといっても大小で、時間をかけて明かされていくような謎などの大ネタと少し出てきた脇役のキャラクターなどの小ネタ、色々な仕掛けができる。
    アバターのシナリオは前半戦で振ったネタを後半で丁寧に拾っているのと、これやったら面白いよね、と思いついたものをギリギリまで詰め込んだ感がある。
    ラストのバトルにヒロイン(ネイティリ)が乗る動物とか、あ、これ拾うんだ!と感心した。
    どこまで最初から計画されていたか分からないけど、前半に観客に振った視点(世界観)が後半で綺麗に逆転していくような作りにしてあって、それが上手く機能している。
    しばらく前に見た羅小黒戦記(ろしゃおへいせんき)も同じ作りにしてあったな、と今思い出したが定番かもしれないが上手く作れば効果的だ。
    羅小黒戦記も環境問題ネタなので比べると面白いかもしれない。
    人型兵器が最後に使うのやシガニー・ウィーバーの出演はキャメロンのセルフパロディーで、ああいうのところもサービス精神の表れなのかなと思う。
    振ったネタを拾うというのは簡単なようで、なかなか難しく思いついても予算や時間の関係で入れられないということは間々ある。
    アバターもシガニー・ウィーバーのキャラクターのアバター(ややこしい)が部族に受け入れられるあたりは思い切りは端折っていた。あそこを描いたらあと30分か1時間伸びていただろうから仕方ないのだろう。
    それでもかなり丁寧にあの世界で出来そうな面白いネタはしっかり掬い上げていた。
    大ヒットした映画を十数年経ってから見て感心したも無いもんだが、すごく感心したし楽しかった。
    予算のあるなしに関わらず、あのサービス精神は見習いたいものだ。
    WAY OF WATERはちゃんと封切り時に見に行こう〜。