SNSでロングサイズのキャラクターの顔の中を省略した描き方を批判している人がいるという話題を見かけた。テレビが大型化したり解像度が上がったりして一般的なテレビアニメの作画を行うA4サイズの紙に描かれたフレームの対比でロングサイズのキャラクターを描くと線が潰れてしまってなんだかよく分からないので拡大して描くというやり方が常態化して久しい。
しかしどうもそういう話だけでもないらしい。
そもそも省略して描いた絵を作画崩れのように感じるということのようだが、これは考えると面白いと思った。
拡大作画というやり方は構図の中における対比より、かなり大きめにキャラクターを拡大してディティールもある程度描く。このやり方では昔のように顔の中が描かれていないのっぺらぼうのキャラクターになることはない。
アニメは「絵」で作られるので上手く描けば省略された絵でも違和感はない、というのが昔の感覚だったのだが、それでも高解像度時代になって小さな紙に描いたものが大きな画面で見られるようになり、相当上手く省略しないといい絵に見えないというのは作り手側も一般的に感じていると思う。
件の絵はうまく省略されているのに、違和感を感じる感想が出たということらしいのだが、これは視聴者のそもそも「アニメの絵」とはこういうものであるという認識がかなり変わってきているということの証左なのかもしれない。
「アニメの絵」というものが絵画などとは切り離されて一つの様式の幻想を作り出しているということはありえるし、それがここ10年くらいで更新されて一般化した可能性もある。
今のアニメの絵は、製造工程にかなり寄り添って作られている。
変わった絵柄にすると、クオリティを維持できないし物量的にも仕上げるが難しい。
細かな工夫は当然作品ごとにされているのだが、大きく逸脱した作品は近年かなり作りにくくなっているように思う。(例外がないわけではない)
そういう絵に目が慣れていれば、そこから外れた絵には違和感を憶えてしまうのは当然だろう。
デジタルでの作画に徐々に業界も移行しつつあるのだが、デジタルになって絵の自由度は上がっていくはずなのだが、それについていける作り手を育てないと新しい絵柄で作品を作るのは難しい。
表現の幅が広がれば視聴者の感覚も広がっていくと思うが、時間はだいぶかかりそうだ。