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  • 三人吉三、とエビデンスとか【2024年09月28日】

    三人吉三、とエビデンスとか【2024年09月28日】

    もう9月も残り2日。
    今週はちまちま仕事とJAniCAの理事会があったり。
    そういえば、いま「マンガ、アニメ、特撮、ゲーム等の国際的な振興拠点及びメディア芸術連携基盤等整備推進に関する検討会議」というのをやっている。申し込めば会議の様子をYouTubeを通じて動画で見られる。
    博物館的なものを作ろうという計画があってその会議。
    石破茂が自民党の総裁に決まったが、石破さんはオタクなので、もしかしたら本当に箱物が出来るのかもしれない。
    緊縮であっさり無くなる可能性もあると思うが、実際できたとして他の分野はともかくアニメ・特撮は報いることができるのだろうか。
    アニメは一応外貨を稼げそうな雰囲気はあるけれど、ほとんどの現場には今だに余裕のある予算は無いので疲弊して倒れるのとどっちが先かのチキンレースだ。
    あ、週の頭はOTOの周年に行ったのだった。お祭り感があって久しぶりに楽しかった。

    今日は木ノ下歌舞伎「三人吉三廓初買(さんにんきちさ くるわのはつがい)」を観劇。
    間に休憩が25分、20分とあるけれど三幕5時間20分ほどの長丁場。
    面白かったので、あっという間ではあったけれど、さすがに膝が少し痛い。
    木ノ下歌舞伎は歌舞伎を現代語訳&現代的演出で見せるので素人でもとっつきやすい。
    歌舞伎通の客も結構いるのだろうが。
    最後はスタンディングオベーション、カーテンコール4回もやってくれたらそりゃ皆んな立つよね。

    筋立ては、親の因果が子に報い、あらゆる登場人物が縁を結んでいることが徐々にわかり、それぞれ破滅を迎えていく。濃厚な親子の関係がモチーフになっていて重たいが重すぎて現実味がないというようにも思える話。
    若い頃だったら嘘くさい様な気もしていたかもしれないが、今見るとシリアスでゾッとする。

    家族というのは病の温床だが、さりとておかげで生きていけることもあるという厄介なものだという様なことをとある精神科医が話していたのを思い出したりもした。
    鹿島茂は小説は結局、家族の話だけだというようなことを言っていた。

    科学の発展で自然からはある程度距離を置いて生きることができる様になったものの、人間同士が距離を置くのは容易ではないよなー。
    しかし、そんな重い話を外連味たっぷりに見せているからこそ、今でも人気の戯曲なのだろう。

    ラストにかかる挿入歌はTaku Takahasi、ラップのリリックをロロの板橋駿谷がやっているのも面白い。

    大脇幸志郎「なぜEBMは神格化されたのか・誰も教えなかったエビデンスに基づく医学の歴史」が面白そう。
    本の紹介によると

    エビデンスに基づく医学(EBM)という言葉が、あたかも医学が事実の裏付けのない空理空論からすでに脱却したかのような含みで語り交わされている。しかし、実際には医学における重要な判断にエビデンスが必須どころか努力目標としてすら求められていないという事実がある。

    本書は、公衆衛生の発達、臨床医学の飽和、薬害事件による臨床試験の制度化などを背景として医学が統計技術を取り込んだ歴史や、EBMという言葉を考案した人物たちの来歴を紹介する。さらに、エビデンスについての誤解や拡大解釈から発展していくイメージとの相互作用に注目することで、医学が生産的に実証性を維持するための課題を探る。巻末に索引、用語解説、年表、主な登場人物一覧、医学雑誌歴代編集長一覧などを付する。

    ということらしい。
    エビデンス…と言われると弱いね。

    大脇氏とシラスで対談していた松本俊彦氏の本も読んでみたいのだが…。
    積読をもう少し解消してからか。

    今週の積読消化。
    だいぶ前に買っていた渡辺大輔「明るい映画、暗い映画」、藤山直樹「集中講義・精神分析(下)」
    渡邊大輔氏の本は結構面白かった。
    しかし、前半の批評は映画のための批評という感じで外側にあまり開かれていく感じがしなくて、そこは苦手。
    後半の普通の映画評の方が面白い。
    とくに鬼滅の刃については全く同意。

    藤山直樹氏の方はフロイト以後の精神分析の歴史。本当にざっとさらっていく感じなので、興味のあるところは参考文献に上がっている本を読まないとよく分からない。
    精神分析は実践がないと本を読んだだけでは何も分からない、と藤山直樹は言っているが。
    精神分析には暇とお金がかかるので、無理じゃん?

    精神医療は最近やっと少し理解できた気がするが、結構勉強しないとよく分からないし、イメージが掴みずらい。
    いま?NHKで統合失調症に関するドラマがやっているけれど、精神科や心療内科は、外科・内科みたいなわかりやすさや親しみがない。
    子供の頃から通い慣れてれば何となくイメージもつくのだが、そんなことはないので。
    情報は探せば結構あるのだが、パッと感覚的に鷲掴みにすることは難しいし、1冊2冊、本を読んでも分からない気がする。なんとかならんもんか?

  • 涼しくというか寒くなって【2023年10月16日】

    涼しくというか寒くなって【2023年10月16日】

    急に寒くなってしまいましたね。

    今週は打ち合わせが飛んで家で引きこもって仕事。

    おかげで手持ちの案件はもう一息。

    読書は東畑開人「ふつうの相談」読了、もう少し一般向けかと思ったら割とガチに心理職の人向けの論文。専門用語はそこまで多くないので一般の人も読めると思うが、心理職の扱う対応の選択肢としての「ふつうの相談」とはどういうものなのか、という話で基本的には専門の人に向かって書かれていた。が、個人的には興味深かった。

    津村記久子「水車小屋のネネ」を買ってきてパラパラとめくり始める。面白そう。

    週末は劇団ロロ「オムニバス・ストーリー・プロジェクト」観劇。1分くらいから5分くらいまでの短い話がどんどん舞台上で語られていくという構成で非常に面白かった。役者さんもどんどん別な役に乗り替わっていったり、美術は見立てが変わって違う場所を表現していく。

    三浦さんの舞台は常に違う時間や場所が同じ舞台の上に重なっていくような表現をするけれど、それが端的に普通の人にも分かりやすい形で提示されていた。

    アニメも向いてる表現だと思うけど、やっている作品を見た記憶はあまりない。でも有名なところだと「おもいでぽろぽろ」の主人公と幼い日の主人公が同じ画面に同居させているというような例がある。

    私も挑戦してみたいけど…なかなか。

    枝松聖さんの展示にもいった。SNSでは交流があったのだけど、初めてお会いした。

    仕事の幅が広くて感心。ハードなSF系の作品から子供向けまで美術設定からプロップ、メカ設定まで。

    アイドルマスターミリオンライブ1話も観た。労作。

    私の監督作の現場がぼちぼちと動きそう。

    楽しくやりましょう。

  • 観劇からの感激

    観劇からの感激

    先日、ロロ『BGM』を見た。

    ロロは、ここ何年か追っかけていて公演があれば大体見ていると思う。

    コロナの前は他の劇団もたまに見ていたけど、落ち着いてからも忙しかったこともありロロ位しか見られていない。

    しかし、演劇もライブも元の状態に戻れそうなので嬉しい限りだし時間があれば色々見に行きたい。

    ロロを初めて見たのは「ハンサムな大悟」だったかと思う。

    板橋駿谷さんは強烈に印象に残ったが、全体として自分が普段やってる仕事に近い事をやっているのに表現として全く違うし思いもつかない様なことをやっているのが面白くて嵌ってしまった。

    三浦直之さんの劇作、演出は色々なものの境界を曖昧にする、又は同じレイヤーというか同じ次元に重ねて見せてしまうというところが強烈に好きだ。

    時間や場所や個性や現実と非現実、普通重ならないものを重ねて見せて、見えないものが見えてくる。

    私の作っているアニメーションは、実はそうしたことがとても得意な表現技法なのだけど三浦さんの様なことをやっている作品はあまり見かけない。無いわけでは無い。

    舞台ならではのシンプルな美術(舞台装置)の中で時間や様々なものが重なり変化していくのは不思議だが自分の中の観念の世界を感じて自然でもある。

    劇作の中で扱われる題材は根の部分はそれほど突飛なことは少ない、と思う。突飛な世界でも地に足がついている感覚がある。それは役者の力量のおかげでもあるのかもしれないが。

    なのに夢の様な魅力的な世界が見えてくるというのは素晴らしい。

    特に今作『BGM』は友達の結婚式に行くという、ただそれだけの事が描かれているだけだ。だが劇的だ。

    日常が魅力的に見えるというのは素晴らしい、自分もそういうものを作りたい、と思っていることもあって『BGM』はとても好きな作品だ。

    今回は再演であったので筋は概ね知っていたが、思っていたより雰囲気が変わっていた。音楽が変わったのが大きかったのかもしれない。

    表現技法の特質をうまく使った表現というのは、やはり個性的で刺激的だし三浦直之の舞台は、いつもそれを明快に見せてくれて好きだ。